第353回定例兵庫県議会が開会~「ポストコロナ社会にふさわしい兵庫を実現」

令和3年度(2021年度)兵庫県当初予算案などを審議する第353回定例県議会が2月17日開会した。会期は3月24日までの36日間。令和3年度予算は総額で過去最大の4兆6,068億円。阪神・淡路大震災があった平成7年度の3兆6,407億円を上回る。約2,000億円の税収減を試算していたが、約1,000億円減に踏みとどまったものの、国の交付税、新たに発行が認められた特別減収対策債の発行などで「辛うじて予算が組めた(井戸知事談)」。過去最大の予算規模は阪神・淡路大震災時より深刻な国家的な危機ともいえる。退任を表明している井戸知事の任期は5カ月あまり。秋までには衆院選が行われる。新しい県政、国の形を視野に県議会での議論が注目される。原テツアキ議長は開会あいさつで、「本定例会は県民の生命、暮らしを守るため、議会の真価が問われるものとなる」と重要性を強調した。

提案説明に立った井戸知事は、今後の県政運営について所信表明。まず、新型コロナウイルス対策について「医療の入口対策、出口対策、入院調整者の健康管理などの医療体制の確保、事業継続、雇用確保、県民生活のセーフティネット強化などコロナ関連対策に着実に取り組み、県民の生命と健康を守る闘いを続けている。まさに、今が正念場です。日常生活を取り戻すためにも、兵庫が一丸となってコロナ対策を徹底し、収束させねばならない」と県民に一段の協力を要請した。
 そして、「歴史を振り返ると、感染症の流行は社会を大きく変えてきた」と、14世紀に欧州で大流行したペストはルネサンスの契機に、100年前のスペイン風邪では公衆衛生に関する基盤整備の重要性が認識され、貧困問題改善のための雇用環境整備や生活協同組合設立への気運が高まったことを示し、「コロナ終息後にも、新たな価値観が生まれ、時代の潮流となって、社会のありようが変わってくる。まさにポストコロナ社会の到来。こうした社会の変化に対応していかなければならないと」と「デジタル化の加速」「変化に強い産業構造への転換」、そして「地方回帰」への流れを逃さず、「地域創生、交流・環流の取組を加速させ、多くの人がくらし、働き、学び、活動し、訪れる、活力に満ちた兵庫を創りあげるべき」と訴えた。
コロナという見えない敵との厳しい闘いが続く中、「社会の絆を大切にする思いが再認識されている。社会の絆を再構築し、人、くらし、産業、地域が個性を生かしながらバランスを保ち、一つになって輝いていく。これはまさに、私たちが震災からの創造的復興の過程で得た財産ではないか。今、この貴重な経験を生かすとき。コロナを乗り越えた先にある兵庫の姿を描き、その具体化への道筋をつけなければならない。ポストコロナ時代にふさわしい「すこやか兵庫」の実現に向け、ともに手を携え、挑戦しようではありませんか」と呼びかけた。
 そのうえで、①安全安心な兵庫づくり②交流の新展開③兵庫の強みを活かした産業の育成④多様な兵庫人材の活躍⑤新たな兵庫への道筋―の5つの柱に沿って新年度の重点施策を説明した。
中で、兵庫2030年の展望リーディングプロジェクトについては、コロナ禍で浮き彫りになった課題を踏まえて強化、防災・減災加速プロジェクト、起業立県実現プロジェクト、スマート県庁推進プロジェクトなど、ポストコロナ社会を先導して未来を切り拓く17のプロジェクトを展開。地域創生戦略で示した5年後の姿の実現に向け、五国の個性や強みを活かした地域プロジェクトでは、新たな大阪湾ベイエリアのグランドデザインの検討、神戸・阪神地域臨海部への集客や交流施設の集積促進、ワーケーションや二地域居住など新たな働き方・暮らし方の実践、地場産業を担う若手クリエイターの受入・育成などに取り組むとした。
策定作業を進めている新しい将来ビジョンについては、「変わりつつある社会の動きを踏まえながら、既存の常識にとらわれず、大きな飛躍を目指して新しい時代を描く発想が求められる。検討を進めてきた将来構想研究会では、未来へ歩む兵庫が大切にすべき基本姿勢を、「個性の追求」「開放性の徹底」「つながりの再生」「集中から分散へ」など6つの柱として、2050年を展望した多様なシナリオを描いている。これを基本に、県民とともに新たなビジョンの策定に向け、検討を進める」と説明した。
 また、新型コロナで厳しさが増す行財政について、 「新しい兵庫づくりのためには、これを支える行財政基盤の確立が不可欠。しかし、コロナに伴う税収減により、令和4年度から令和9年度にかけて、総額330億円の要調整額が生じる見込み。ストック指標でも、防災・減災、国土強靱化対策を加速させることもあり、県債残高比率や将来負担比率は、財政運営目標を上回ることが見込まれる。このため、令和3年度には、行財政運営方針の3か年目の見直しに際して、新型コロナの感染状況や経済動向などを十分見極め、財政フレームの検証など必要な見直しを行う。厳しい財政状況を踏まえ、現在実施している給与抑制措置のうち、特別職の給料及び一般職の管理職手当の減額率を引き上げる」と報告し、理解を求めた。
 最後に、「知事就任から20年近く、この間、五国からなる多彩な地域と多くの県民に接してきた。そして極めて豊富な地域資源や多様な人材など、兵庫の持つポテンシャルの高さを認識した。ポストコロナ時代に向けた挑戦が始まろうとしている今、かつて「雄県」と称された兵庫が、再びわが国をリードしていく存在でありたいと願っている。そのためにも、未来に向けた投資は、ためらってはいけない。厳しい財政環境にあっても、創意工夫しなければならない。知事としての最後の当初予算編成に当たって、当面のコロナ対策はもちろんのこと、兵庫のポテンシャルを更に伸ばし、活かせるよう、想いを込めた」と予算編成に対する姿勢を述べ、「その実現は、新しいリーダーと県民のみなさんに委ねることになるが、5か月あまりの残る任期を全力で駆け抜け、次代へのつなぎ役としてしっかり果たす決意。県政150年の歴史は、高い壁を乗り越えようとする先人たちの果敢な挑戦と絶え間ない努力の歴史。人知を超えた自然の驚異に立ち向かうのも、私たち自身の挑戦以外にない。そして、その先には希望が開かれる。
「兵庫なら、きっとできる。」
県民のみなさん、ポストコロナ時代の新しい兵庫づくりに、ともに挑んでいこうではありませんか」と呼びかけた。
 このあと、新型コロナ拡大防止対策の強化、ポストコロナ社会を見据えた地域経済の活性化・地域の元気づくり対策、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を活用した安全・安心の基盤づくりを基本方針に緊急対策を中心とした令和2年度2月補正予算案(総額約2,279億円)を審議、原案通り可決した。