• 井戸知事退任あいさつ  7月30日午後4時から、県庁1号館中庭で開かれた退任式での井戸知事のあいさつは次の通り。県職員を代表して荒木副知事は「井戸知事がまかれた多くの種は、県下のすみずみ、あらゆる分野で結実し、花開いています」と敬意と感謝の言葉を述べ、「人生100年時代、第2の青春を完全燃焼されることを」と祈念した。

     井戸知事 「皆様のお陰で5期20年にわたり、県知事を務めさせていただきましたが、明日で退任させていただきます。知事の任期が満了いたします。本当に考えてみますと長い期間になりました。ありがとうございました。思い返すと、貝原知事からバトンタッチを受けて就任しました。最初の課題は復興10年計画をどう実現するかということでした。計画のプログラムをつくりながら、最終年を迎えることができました。高速道路の整備が思うようにいきませんでしたが、概ねほとんどの事業が達成できました。計画上の達成で、それで創造的復興が成り立ったということではありません。しかし、その翌年の感謝国体、のじぎく国体は県民の皆さんの県民運動の成果となりまして、花いっぱい運動の会場で全国の皆さんに「“ありがとう”心から・ひょうごから」の感謝の気持ちを表すことができました。大変素晴らしい盛り上がりの国体でした。
     災害にも多く見舞われました。平成16年の台風23号。ちょうどフランスのアヴェロン県の昆虫博物館で視察をしていた時に、藤本副知事から電話がありまして、「台風に直撃されるので、ふれあいの祭典の但馬での開催を中止しますが、いいですね」とのことでした。「大きな災害が起こるようなら連絡してほしい」と伝えたところ、大変大きな災害に見舞われまして、日程を繰り上げ、翌朝、関空からヘリコプターで兵庫県の被害を確認して、対策本部会議を開催しました。その後も台風被害は平成21年の台風9号、平成23年の法華山谷川、26年の丹波の被害、30年の大阪湾高潮。県土はその度に安全度を増したといえます。
     産業の面でも私の1期目の課題は雇用の確保でした。最初の公約は5万人の雇用の確保でした。そのような課題を乗り越えてこられたのも、皆さんのお陰と思っています。教育でも体験教育の体系をつくることができたし、兵庫の芸術文化度は高いと評価いただけるような取り組みができました。基盤整備でも新しい取り組みができました。皆さんとともに進めてきた新しい兵庫づくり。私なりに成果をあげられたと思っています。このような成果を次の時代につないでいただきたいと思います。
     兵庫のために努力していただきたいと思います。県庁は何のためにあるのか、県民の幸せの実現のためにあります。県民の幸せをどう実現するのかが使命です。この使命をしっかり一致団結して貫いていただきたい、このように願っております。
     震災復興で学んだことがあると思いますが、私は役人仕事をやめようとよく言いました。100の安全度を整えるのではなくて、70ぐらいの安全度でいいんだと。不正利用が仮に30やられたとしても70の人が助かるのならば、その事業を推進した方がいいんだ、50対50ならちょっと考え直さなければなりませんが。7割り程度、所期の目的を達成することは、立派に事業の目的達成につながる、ほったらかしにする方が問題だと、言ってきました。これからも役人は100%の仕事を求めがちですが、100%を求めて何もできない仕事ならやめたほうがいい。70でも出来たら大勢の幸せを実現できる、そのような仕事を推進していただきたい、と皆さんにお願いいたします。
     8月1日からは、無役。私にとりまして昭和43年に鳥取県での仕事をしてからずっと仕事一本だったので、趣味は何かと聞かれても仕事と答えてきましたが、その仕事がなくなると、暇との戦いをしなくてはならない状況になります。どのような生活を再構築するか、見守っていただければありがたいのですが、私なりに1カ月くらいたつと報告できるかもしれません。まん延防止重点地区も解除された後は、その報告会をいくらでもお付き合いいたしましから、お誘いいただければと思います。来年の5月にはワールドマスターズゲームズが開かれる予定ですので、それを目指してしっかり、鍛えたいと思っています。基本的に暇にどう挑戦するかについての相談には応じますが、仕事の相談は受け付けませんから、そのような接し方をしていただきたいとお願いいたします。
     本当に長い間、皆さんにはお世話になりました。迷惑をかけたことも随分あったと思います。自分なりに、あるいはチームとして組織として、積み上げてきたものを一蹴されて、突き返されて、再検討してこいと言われた方もいると、そういう目にあわれた方にお詫び申し上げますが、それは、自分の趣味で申し上げたことではありません。私なりの経験や仕事のやり方の中で培ってきた判断が、そのような行為になったと思います。そのうような意味では、県庁は非常に範囲が広い、扱う分野も広い、それぞれ連携しにくいこともありますが、情報を共有し、総力を発揮して、仕事を県民のために推進していただくことを願っています。
     繰り返しますが本当に皆さんのお陰で20年間、井戸なりの仕事が推進できたと思っています。大変、充実した気持ちで、去れることができました。本当にありがとうございます。ただ、この後、対策本部会議があります。兵庫県は人使いが荒い県だと肌感覚で感じています。皆さんも仕事に対しては厳しい県だと覚悟して入ってきたと思いますので、その覚悟を貫いていただきたいと思います。繰り返します、本当にありがとうございました」