• 兵庫・神戸で第1回ドローンサミット  ドローンの社会実装加速化をめざし、国や全国の自治体、民間企業・団体、一般県民らが一堂に会した第1回ドローンサミットが9月1~2日の2日間にわたり、神戸ポートアイランドで開かれた。
     兵庫県、公益財団法人新産業創造研究機構(NIRO)では、ドローンによるイノベーション・技術革新、新たなビジネスモデルの確立などに挑戦する民間企業・団体等を支援してきた。これらの取り組みもあって全国初のドローンサミットを兵庫・神戸で開催。内閣官房と県が主催した。両日とも、毎年、ポートアイランドの神戸国際展示場で実施されている西日本最大規模の産業見本市「国際フロンティア産業メッセ」と同時開催され、ドローンの実用化に取り組む自治体の事例発表等のシンポジウムをはじめ、同メッセ会場内で最新ドローンの展示などが行われた。
     1日午前、神戸国際展示場で開かれたサミットの開会式で齋藤元彦知事は、「ドローンを使ったワクワクするような取り組み、安全安心の試みが広がっている。第1回の開催地に選ばれた県として県内自治体とともにしっかりと取り組みを進める。メッセではいろんな展示があり、兵庫の方向性を見ていただきたい」と呼びかけた。
     共催する経済産業省の里見隆治政務官、国土交通省の清水真人政務官は、サミットを通じて全国の自治体間の情報共有、連携が進むことに期待を寄せた。ドローン議連の田中和徳衆議院議員、鶴保庸介参議院議員は法整備などに積極的に取り組むことを約束した。
     引き続き、鈴木真二・東京大学未来ビジョン研究センター特任教授が「ドローンの各国法制度の動向と将来像」、野波健蔵・千葉大学名誉教授が「世界と日本のドローン産業動向」をテーマに講演。野波氏は飛行性能等がトップクラスの様々な機体を紹介し、「日本のドローンメーカー数は世界5位だが、世界レベルの性能を有する機体がない」と現状を語り、さらなる技術開発を訴えた。
     午後からは国の取り組みの報告の後、兵庫県、神戸市など全国8つの自治体の担当者が事例発表を行った。兵庫県の竹村英樹・産業労働部長は「DRONE HYOGO~ドローンの実装による社会課題の解決に向けた兵庫県の取組~」と題して、令和元年度から全国に先駆けて実施しているドローンの利活用実証事業を説明した。翌年度から民間からの提案を中心に事業を展開しており、4年間で118件の提案があり、うち41件を事業採択。特に今年度はドローン社会実装促進実証事業として8件を採択した。
     竹村部長は、農業、環境、測量、インフラ点検、観光など多様な分野での事業成果を紹介し、「企業関係者・研究者らが面白いアイデアを出し合い、ドローンを使った社会課題の解決に楽しみながら取り組んでいる。県はそのプラットフォームをつくっている。これからもドローン・チャレンジを続けていく」とイノベーション創出への意欲を語った。
     神戸市の森浩三・企画調整局デジタル戦略部長は「神戸市役所におけるドローンの社会実装」について説明。このほか、北海道での積雪寒冷条件下での実証、福島県のロボットフィールドを活用した取り組み、三重県、長崎県の離島におけるドローン物流実現に向けた事例などが報告された。この日、会場には約200人が参加、オンラインでも配信され、最大約300人が視聴した。
  • HYOGOからのイノベーション 空の産業革命を発信  2日は、神戸学院大学ポートアイランドキャンパスとポーアイしおさい公園で、今年度、県のドローン社会実装促進実証事業に採択されたドローンによるフードデリバリー(採択事業者:TOMPLA㈱)と、ドローン用緊急パラシュート装置(採択事業者:日本化薬㈱)のデモンストレーションが行われた。
     フードデリバリーは飲食街のハーバーランドからドローンが空を飛んで神戸港を横断し、ポートアイランドにアイスコーヒーを届けるもの。来年度以降の事業化を目指している。関係者ら約150人が空を見上げる中、青い空と白い雲をバックに小さな機体が見えた。機体がだんだんと大きくなってきたかと思うと静かに着陸。通常、車で15~20分かかる距離を約5分、氷が溶けない時間内で運んだ。
     続いての実演では、飛行中のプロペラを止めてドローンを落下、すぐさまパラシュートとエアバックが開き、風に流されながらも機体は壊れることなく着地した。パラシュートは今年2月に販売開始し、エアバックは現在開発中。市街地での安全な利用への貢献を目指している。
     また、新明和工業㈱による無人飛行艇のデモフライトも海上で行われた。
     国際フロンティア産業メッセ2022には2日間で延べ約1万3千人が来場。427社・団体が496ブースを出展した。ドローンを活用する自治体・関連企業等は68社・団体が出展した。
     関連する講演やセミナーなどもあり、2日午後にはNIROの牧村実理事長をナビゲーターに齋藤知事と久元喜造・神戸市長が水素社会をテーマにパネルトークを行った。
     まず、牧村理事長が水素はエネルギー問題と地球環境問題を同時に解決する切り札であることを説明。久元市長はオーストラリアで液化水素を製造、海上輸送し、ポートアイランドで利用するシステムの開発実証事業を紹介し、水素サプライチェーンの構築への意欲を示した。
     齋藤知事は、姫路港を拠点とした水素産業クラスターの形成へ産学官で取り組んでいることを紹介、「水素産業は製造、生産、運搬、消費など裾野が広い。行政として企業が安定して取り組める環境整備が重要」との考えを示した。久元市長も「企業参入の機会は多く、県市協調してサポートしたい」と応じた。
     さらに、久元市長は「消費者の理解を得て、利活用を進めることが課題。産業界と連携、学会の知恵を得て進めたい」と市民参画の必要性など今後の方向を語った。齋藤知事は「官民スクラムによって安定した投資にチャレンジできる環境づくりを進める」と応援を呼びかけた。
     最後に牧村理事長が「水素社会の実現へ、受け入れ、供給インフラの整備、産業支援、機運の情勢などが必要。兵庫・神戸が水素先進地としてのポテンシャルを発揮して、一体となった取り組みを」と訴えた。