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ありがとう井戸さん!
2021年令和3年7月31日、井戸敏三知事が退任された。兵庫県揖保郡新宮町(現たつの市)に生まれ、阪神・淡路大震災の傷跡が残る平成8年、兵庫県副知事に就任、被災者支援、復旧復興に現場の視点から取り組み、2001年平成13年8月1日、貝原俊民知事からバトンを受け、兵庫県知事に就任、創造的復興の実現、安全安心、県民との参画と協働の県政の推進、元気兵庫、すこやか兵庫をめざし、ふるさと兵庫のために・・・
5期20年にわたる井戸県政の評価はさまざまあるだろうが、副知事就任会見から取材させていただいた私は、井戸さんの笑顔が忘れられない。
「気さく」な知事。就任当初から、県民をはじめとした会う人たちにそんな印象を残してきた。県主催の催しや会合、通学中の小学生、まちの人たちと気軽に声を交わす。たぶん一度あった人を肌感覚でインプットし、次に会った時には「〇〇さん」と声をかけ、時には聞いた要望や課題等を「〇〇はこうなりましたよ」「〇〇は少し待ってください」などと報告している姿も見てきた。記憶力、頭のいい人と単純に思っていたが、それだけ現場に広くアンテナを張って、スピーディに行動するからこそ、自ら対応状況を報告できたのではないかと思う。今は知事のメディアへの露出度が評価されるが、現場で県民との対話する姿勢は抜群であり、自らも楽しまれていたように感じる。知事自らが街頭で県政報告を行う「さわやか街頭トーク」も100回近く行われた。
ともに歩み、昨年亡くなられた地域団体の女性代表だった方は「井戸知事の一番の良さは、やさしさ」と評しておられた。現場第一主義を知事が実践し、そのことが多くの職員に共有さてているのは、本当の「やさしさ」を井戸さん自らが求め続けてきたからかもしれない。
さまざまなイベントや祝いの席で、イベントのテーマ、祝賀会の主役の名を読み込んだ歌を知事あいさつで披露され、集う人々を笑顔にさせた。そんな特技がある知事は唯一だろう。行財政構造改革など目の前にある課題が山積し、苦難の20年だったかもしれないが、「のじぎく兵庫国体」では天皇杯を獲得、選手団から胴上げをされる兵庫県政史上初の知事に。県政150年のメモリアルも知事として迎えた。関西広域連合の初代連合長という歴史的大役も。連合長として誘致したワールドマスターズゲームズ関西がコロナで1年延期となり、本来なら水泳競技で金メダル、知事としての有終の美を飾られるはずだったのに、念願が叶わず無念だったかもしれない。しかし、目標はきっと達成されるだろう。
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笑顔が似合う兵庫の知事
7月30日午後4時、県庁中庭の知事退任式では職員に何度も「お陰さまで」「ありがとうございます」の言葉を述べ、最後に「充実した気持ちで、去れることができました。ただ、この後、対策本部会議があります。兵庫県は人使いが荒い県だと肌感覚で感じています。皆さんも仕事に対しては厳しい県だと覚悟して入ってきたと思いますので、その覚悟を貫いていただきたい」と最後の最後まで井戸流の笑顔で職員を叱咤激励した。
井戸さんが20年前を振り返る時、平成13年8月1日、知事就任その日に開催されたJC主催の中学生による「子ども県議会」への出席が初仕事と嬉しそうに度々語られていた。いま、その中学生は30代半ば。井戸県政とともに成長し、未来の兵庫県を担う世代になった。退任式で県庁を去るとき、突然、男の子から手作りのミサンガをプレゼントされるハプニングがあった。井戸知事は満面の笑顔で受け取り「ありがとう」といった。男の子は笑顔でこたえた。井戸県政は未来へと受け継がれていくと確信した。(大東 章)
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