• 兵庫県栄養塩類管理計画で答申 瀬戸内海の窒素など増やし、豊かな里海を再生 民間工場とも連携、順応的な管理推進  豊かで美しい里海の再生を実現するため、兵庫県が県環境審議会に昨年8月に諮問していた、栄養塩類の管理に関する計画案がまとまり、6月14日、鈴木胖会長が菅範昭県環境部長に答申を手交した=写真。
     かつて、瀕死の海と呼ばれた瀬戸内海は、厳しい排水規制のもと、大きく水質が改善した。その反面、一部の海域で、のりの色落ちや漁獲量の減少など深刻な課題が生じ、その要因の一つとして、生態系の基盤である植物プランクトンの栄養となる栄養塩類(窒素及びリン)の濃度低下が指摘されている。
     このため、県では、、令和元年10月に「環境の保全と創造に関する条例」を改正し、栄養塩類の「望ましい濃度」を全国で初めて設定。県条例の改正等を受けて国は 昨年6月に瀬戸内海環境保全特別措置法を改正(今年4月施行)し、府県知事が海域への栄養塩類供給方法を定めた計画を策定できることにしたことから、県は同審議会に諮問、今年度中に県栄養塩類管理計画を策定することにした。
     計画案では、大阪湾、播磨海域、播磨灘北西部、淡路島西部・南部の海域で、全ての窒素及びリンを対象物質に県条例下限値から環境基準上限値を目標値に設定した。
     栄養塩類を増やす取り組みとしては、「有害物質が増加しない」「栄養塩類供給量の調整が可能」等の条件を満たす28の下水処理場に加えて、工場5カ所を増加措置実施者に選定。対象海域の24地点で月1回調査を行い、県は増加措置実施者と連携しながら、環境審議会、湾灘協議会(国、県、市町、漁業者等)に定期的に報告、意見を聞き、必要に応じて計画を見直す順応的な管理を行う。
     同審議会の藤田正憲水環境部会部会長は「豊かな海を取り戻すため、窒素濃度を下げない処理を自治体の下水道施設にお願いしてきたが、民間の工場にも協力を得ることにした」と計画案のポイントを説明。
     答申を踏まえ県は環境省と協議し、正式に県計画を策定することにしており、菅環境部長は「豊かな海を目指した様々な取り組みを進めてきたが、今回、計画として位置付けしてもらった。県民の理解を深め、漁獲量が戻るよう努力していく」と話していた。